福井県経営革新フォーラムが所属する「人を大切にする経営学会中部支部」との合同例会という形で中部地区各地区より多数の方に、「第14回日本でいちばん大切にしたい会社」大賞3社を輩出した石川県金沢市に集まっていただき、7月2,3日の2日間で講演会と企業視察会が開催されました。
日時:令和6年7月2日(火) 13時~
場所:金沢市文化ホール 大会議室
第1講演
株式会社トーケン 代表取締役会長 根上 健正氏
テーマ:第2創業期における改革・変革への挑戦を語る 「強く やさしく おもしろい企業づくり」への道
第14回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 中小企業庁長官賞受賞
2007年頃から「リーマンショック」や「コンクリートから人へ」という政策などあいまって、多くのゼネコンが倒産し、建設業淘汰が進んでいく中で会社経営を任されることとなった、根上氏。トーケンは大手ゼネコンと比較すると会社・社員ともに建設人としての意識が低いと痛感し、「強く やさしく おもしろい企業つくり」をスローガンに、従来の惰弱な地域ゼネコンから脱却していく様を語っていただきました。
※強く やさしく おもしろい企業とは・・
強い企業・・規模の大小でなく、財務力・技術力・提案力・成長力
優しい企業・・社員が主役。社員の給与や福利厚生が整っていて、何でも言えるアットホームな職場環境。地域社会への貢献。
おもしろい企業・・目標を持って何かにチャレンジしている企業。
当時は社員からの不満が多く、機会があればいつでも辞めたいという社員も多くいたとのことで、いかに社員の意識を変え、愛社精神を持たせるかに悪戦苦闘したという。
その中で社員のモチベーションを高める手段のひとつとして、社員が講師を務める社内勉強会「胎動塾」の紹介がありました。
期末に社長より講師となる発表者と、テーマ(会社のマネジメント上の課題や、本人の能力向上に望むことなど)が与えられ、3~6カ月後に全社員集合の社員例会にて30分以内で発表するというもの。
発表までの資料作りで本人は学び、発表力がつき、聞いている社員は仲間の発表から刺激をうけるという、連帯感・スキルアップ・意識改革の一石三鳥以上の成果を得られているとのこと。年に24回も発表会が行われているそうです。
その他いろいろな取り組みをご紹介頂きましたが、ご講演中「社員が主役」というワードが幾度と出てきました。
如何に社員が大切だと普段から思っているかが伝わってくるご講演でした。
第2講演
株式会社北國FHD 人材開発部 部長 横越 亜紀氏
テーマ:Qualiity Company, Good Company.~北國FHDの人的資本経営~
第13回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞 地方創生大臣賞受賞
規制金利から自由化され、銀行はただお金を預かって、ただお金を貸すだけで儲けていた時代では今後なくなっていく、何かしないと地方銀行はダメになる、と危機感をもったのがちょうど2000年頃。そこからの企業変革を進めていった北國FHDのストーリーと共に人材についての考え方をご講演いただきました。
人材育成に関しては、やはり地方銀行ということもあり、自社で採用、育成し活躍してもらうところは当然だが、最終的にその人を自社で抱え込むのではなく、地元企業で貢献できる人を輩出するというのをモットーとしている。
営業戦略が昔ながらのノルマ・数字をひたすら追い求める考え方から、お客様が本質的には何を求めているのか、それに応えていくという考え方に変わり、またVUCAと言われる変化の激しい時代のなかで、そういった人材になれるように社員にはキャリアの自律を求めており、人事制度もそれまで年功序列色の強かったものから、社員の持っているスキル、役割、地域・お客様やチームへの貢献度など、一人ひとりの頑張りが賃金にしっかり反映されるような制度に変わったと仰っていました。
キャリアの自律に対して会社として多くのサポートをしており、いくつか例をご紹介いただきました。
①自社開発した人材管理システムを用い、全社員のキャリアプランや取り組み状況を見える化。社員同士の刺激になり、配属希望先も登録できるので、人事異動の参考となる。
②役員会議から、社員の勉強会まで、様々なことも全社員に見える化をしている。
③社内副業制度を用いて、やってみたい部署の仕事をお試しできる。
④自己啓発、時代の変化に対応した学び直しのための費用補助。
大学でのMBA取得や、各種講座、資格取得の費用を全額ではないが、希望者全員に。
⑤男性、祖父母向けの育休や、誰でも時短勤務・休職できる法定を超えた制度を導入し、働きやすさを追及。
大きな企業ならではのシステムなどを駆使しているものの、やり方を考えれば小さい会社でも応用できそうな内容であると感じました。
第3講演
人を大切にする経営学会 会長 坂本 光司氏
テーマ:社員のモチベーションが高い企業の経営学
先生の長年の研究から、企業の業績格差はビジネスモデル力格差や人材力格差ではなく、社員のモチベーション格差であり、各国の社員のモチベーションの実態や仕事への満足度調査の数値結果などを引き合いに、社員のモチベーションを高める経営とはどういうものかというご講演をいただきました。
色々な数値的な調査結果を教示していただき知ったことは、働く幸せを感じる人の割合、働くモチベーションを高く持った人の割合、仕事の満足度、どれも日本は世界的に見て低い結果であるということ。逆にインドは突出して高い結果であるということ。
最後は学会で調査された、社員のモチベーションを下げる要因調査の結果と合わせて、前2名との講演でもわかる通り、経営陣の最大の仕事は社員のモチベーションを高める経営の実践であり、そのためには社員のモチベーションを高めるという強い意思を持つこと、社員一人一人家族のように大切にしたり、決断力があったりとリーダーシップのある経営・幹部社員がいること、社員に裁量権があり、やりがいを感じられ新しいことにチャレンジできる組織風土があることが重要であると仰っていました。