9月9日(水)、文教大学東京あだちキャンパス「AIDATE HALL」にて、「人を大切にする経営学会 第13回全国大会」が開催されました。
今回のテーマは、「人を大切にする経営と地域貢献・社会貢献」です。
3つの基調講演をはじめ、特別講演や分科会もあり、一日を通してさまざまな角度から「人を大切にする経営」について学ぶ機会となりました。
基調講演では、令和7年「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」内閣総理大臣賞を受賞された清川メッキ工業株式会社 取締役副社長 清川卓二氏、株式会社アップルファーム 代表取締役 渡部哲也氏、トップ保険サービス株式会社 代表取締役・お客様サービス本部長 野嶋康敬氏の3名から、それぞれの取り組みについてお話を伺いました。

清川メッキ工業様では、1997年に始めた「めっき教室」から「アントレ・キッズ」、そして現在の「みらい育成プロジェクト」へと、長年にわたり子どもたちと関わる活動を続けています。
その出発点は、社員が自分たちの子どもに「親としての仕事の誇り」を伝えることでした。自分の仕事が社会でどのように役立っているのかを子どもに伝える活動を通じて、社員自身が仕事の意味や価値を見つめ直し、誇りを取り戻すことを目指したのです。
この活動は、その後、地域の将来を担う人材を育てる取り組みへと発展し、現在では高校生と大人が一緒になって地域の課題に向き合う活動へと広がっています。社員とその家族を起点とした取り組みが、時代や地域の変化に合わせて進化し、地域との関係を深めているところが印象的でした。
また、こうした活動は、現在も社員が自分の仕事の意味や価値を改めて考える機会になっています。社員が地域の人たちと関わり、自らの仕事を伝え、共に考える経験を重ねることが、人材育成や次のリーダーを育てることにもつながっているとのことでした。
社員の仕事への誇りを取り戻すために始めた活動が、地域の人材育成へと広がり、その経験が再び社員の成長や組織の活性化につながっていく。さらに、採用や地域からの信頼にもつながるという循環が生まれています。キャリア教育を通じて、社員の誇り、地域の未来、会社の成長を結びつけている点は、非常に参考になる内容でした。
渡部氏のお話では、障がい者雇用に対する考え方が大きく変わりました。
中でも心に残ったのが、「組織に人を合わせる」のではなく、「人に組織を合わせる」という考え方です。できないことを見るのではなく、一人ひとりの長所や強みに目を向け、それを生かせる場所をつくっていく。障がい者雇用に限らず、すべての社員に通じる人事の考え方だと思います。
また、こうした取り組みを会社の中だけで完結させず、地域とのつながりを含めて一つのストーリーにしていくことの大切さも学びました。
野嶋氏のお話からは、社会貢献は地域や社会のためだけに行うものではなく、そこに関わる社員の誇りや成長、さらには働く意味にもつながっていくことを教えていただきました。
特に大切なのは、会社から言われて取り組むのではなく、社員自身が考え、主体となって動くことです。社員が自ら関わるからこそ、その活動が会社の文化として根付いていくのだと思います。

特別講演では、文教大学経営学部教授の田中克晶氏とゼミ生の皆さんから、「医療的ケアが必要な学生との共創によるインクルーシブイノベーション」というテーマで発表がありました。
実際に障がいのある学生を含めたメンバーによる取り組みも興味深いものでしたが、何より学生の皆さんのプレゼンテーションに感動しました。自分たちが取り組んできたことを、自分たちの言葉で堂々と伝える姿が強く心に残っています。
そのほか分科会も充実しており、基調講演とはまた違った内容に触れることができ、一日を通して多くの学びがありました。
今回の講演の中で共通していたのは、地域貢献や社会貢献を会社の外に向けた活動だけで終わらせていないことです。
社員が関わることで人が育ち、組織にも変化が生まれる。そして、その活動を続けることで地域とのつながりも深まっていく。結果として、それが会社に返ってくるという流れが、それぞれの取り組みの中にありました。
初めての参加でしたが、今回のテーマである「地域貢献・社会貢献」だけでなく、その根源にある「人を大切にする経営とはどういうことなのか」を考える貴重な一日となりました。
今回聞いたことをそのまま自社に当てはめるのではなく、自社なら何ができるのか、自社らしい形とは何かを考えながら、一つでも実践につなげていきたいと思います。